誘惑じょうずな先輩。



「でも、早矢くんと香田先輩は付き合ってないでしょ」



万里先輩にまったくの正論をぶつける日向くん。



付き合ってないでしょ、か。


それを言われると……、なかなか厳しい。




その言葉に、先輩は……、わたしと違ってあまり動じていない。

まるでそれがどうなんだって言うくらいの態度で、ちょっと険悪になってるんじゃないかと不安になる。



けれどそこはさすがの従兄弟で、慣れた雰囲気を醸し出しながら「そうだよ」と頷いた先輩に、日向くんは不思議そうに首を傾げた。



「じゃあさ、香田先輩に俺が構うの、早矢くんが口出しするのはなんで?」



日向くん、まさにそのとおりなんだけど。


その答えを聞く勇気はわたしにはない。



わたしのなかでは……いくら遊ばなくなったといっても、先輩はプレイボーイのイメージだもん。





都合のいい相手は繋ぎ止めておく。




そんな不道理なことが、彼らにはフツーなんだって人生の先輩、愛先生に教えられたから。