ドキリ。
そのとおり、わたしは万里先輩が好き。
だけど、万里先輩の従兄弟なんだったら……、気持ちを伝えてくれただけにちょっと言いにくい。
ほら、いまだって悲しそうに目を伏せてしまった。
こういうときに気が利く言葉ひとつ言えたらいいのに、わたしはおろおろすることしかできなくて自分で自分を引っぱたきたかった。
いやいっそ、もう、よけいなことは考えずに先輩が好きなんだと伝えてしまおう……、
そう決心して、日向くんに声をかけよう、って思った瞬間。
「__ 岳」
ふわりとわたし好みの匂いが鼻腔をくすぐって。
ちょっと低めの、でもソフトな声が耳を通った。
ほら。
…………もう、だ、からなんで。
こういうときに、突拍子もなく現れるの。
会いたいときにぜんぜん来てくれないくせに。
おかしいよ……、万里先輩。



