誘惑じょうずな先輩。




「それまで、待ってて」



こんなにまっすぐで、なにかに一直線になった先輩、はじめて見た。


待ってて、なんて。



待たないわけ、ないでしょ。



だって、いまの先輩、世界一かっこいいもん。




学校ですれ違っても、話しかけちゃだめなんだって。


先輩は、そんな資格ないんだって言う。



あるよ、だけど、先輩がそう言うならわたしも我慢しようと思う。



待ってて、って言葉、信じようと思う。




「……わかり、ました」



そうわたしが答えたら、抱擁をやめて、ぽんっと大きくて冷たい手をわたしの頭にのせて、ふわりと微笑んだ。



「……ほかのやつ見ないでね、お願いだから」



目を細めてそう言ったかと思ったら、
はじめて会ったときみたいに、保健室の窓から身を落とした。