考えれば考えるほど先輩の思い通りな気がして、こんどは躊躇なく先輩の腕を引っ張る。


早くどこかに行って……!

もう平穏な昼休みを返して!



「おお、ゆんちゃん積極的〜〜」


「っ……?!」



積極的……?!

びっくりして思わずパッと離した先輩の腕。



先輩は、わたしの反応なんか気にしてないように口を開く。




「俺はバンリね。覚えといて」



知ってるよ。


万里 早矢(はや)先輩。



もし知らなかったとしても、こんな衝撃的な出会いをして忘れられるわけがない。


そういうところが、先輩のズルさなんだ。




「また会いに行くかもね」



ひらひら〜と無造作に振った大きな手。


そのままピョンっと跳ねて……、窓の外へ消えてしまった。


窓から現れて窓から消えていくなんて、やっぱり変わった人。




って。
…………え、ここ3階だけど?!





慌てて窓へ駆け寄り、下を覗くと……。



地上にはぐーんと腕を放って伸びている男の人が1体。


たぶん近くにある木を伝って降りたんだろうけど。





いやいや、どんな身体能力……?!