「夏川くんって、やっぱり良い人だね」
真顔で言えば、夏川くんは必ず反論する。
「そんなんじゃねーよ」
そうなんだよ。
夏川くんも、不器用。
わたしが言えないけど。
「少なくとも、香田さんは気に入ってるから、よく見られようとしてんの」
「……ええ、うそだぁ」
「どーだか」
きっとわたしじゃなくても、優しいんだよ。
こうやって相談に乗って、冗談言って。
夏川くんがこんなひとだと、最初は思わなかったもん。
「俺も、香田さんっていう獲物を狙ってる飢えた男なんだってわかっといた方がいいよ」
べ、と舌を出し、澄んだ瞳を向けてくる夏川くん。
突然の胸きゅんに戸惑うけど、真に受けたらまたからかわれそうだから、ここは軽く流すべきだと思って「うん」と返事をした。
「うんって……、ちょっとは焦れよ」
呆れたように言う夏川くんがよくわからなくて首を傾げる。



