なんでもよくないっ!
そう思うけど、きっとこの人は名乗らなきゃ帰ってくれない。
意を決して先輩に言う。
「……香田、ですけど」
「コウダ?
コウダ なにちゃん?」
「……っ、ゆのは ですっ」
「そう。
じゃあ、ゆんちゃんね」
「……っ?!」
“ ゆんちゃん ”
なななに勝手にあだ名まで……?!
しかも、それ、中学時代からのあだ名……。
さすが女たらし。
名前だけでこんなに惑わしてくるとは。
なんだか悔しくなって先輩を軽く睨むけど、先輩は変わらずペースを乱さない。
「反抗的な子は嫌いじゃないよ」
微笑を浮かべるそのカオは、わるい。
ドキドキと高鳴る鼓動は離れていても聞こえるんじゃないかって不安になる。
……やだ、もうこんなに心を奪われてる。
こうやって、いろんな女の子を堕としてきたのかな。



