誘惑じょうずな先輩。



.




「夏川くんって、友だち想い、だね」




銀髪の彼が去り、保健室に残されたのは夏川くんとわたし。


他愛もない話をする。




「えー、まじ。
俺、そんなふうに見られてんの」



ククッと笑った夏川くんに、もう、と頬を膨らませる。



「からかうような言い方、やめてよ……」



ちょっと拗ねてそう言うと、夏川くんはなんだか機嫌良さそうに口を開く。



「香田さんって、女くさくねえのに女だよな」



「……え、どういう意味?」



女くさくないのに、女?




「男にしかわかんねえこと」



……なら、気になるから、口に出して言わないでよ。



そう思ったけど、わざわざそれを言おうとは思わなかった。



……だって、夏川くんのあんな笑顔、はじめて見たから。


一気に幼くなって、ちょっと、ほんのちょっとだけドキッとした。