誘惑じょうずな先輩。



「いや、あの、怪我したって……」


「……」



「な、んで、無視……」



まったく反応ない銀髪の彼に、自分が虚しくなって涙声で夏川くんに訴えたら、夏川くんったら、ちょっと笑った。



「あいつの手、見てみ」



「……手?」




なんだろう、と思って遠くから凝視してみる。


じーっと目を凝らすと……。



「え、血が……っ、」



なにかに引っ掻かれたみたいな、痛々しい生傷があるのが見えた。



まさか……っ、こんなところで喧嘩……?!



「見せて、ください……っ」




ぎゅっと拳を握り、銀髪の彼に思い切って言う。


そんなわたしを彼は一瞥。



とくになにか言うわけでもなく、見つめている。