「…そう。千花はね、恋愛とかはよく分かっていないと思う。私と会うまでは、人を信じていないところがあったけど。今は、違う。徐々に誰かと話せるようになってきている」
咲さんは千花のことを大事に想っている。
だから、そんなことが言える。
「ああ、わかってるよ。だから、俺が一番好きだって言わせるよ」
西原はニッっと笑ってから、咲さんに言う。
「そうね、あんたはそういうやつだよな。私はあんたの味方でもないから。千花の味方だからね」
咲さんは微笑んで、俺に言った。
「おお、こわいこわい。千花の味方だもんな、そりゃ、そうか」
俺は冗談混じりで咲さんに返事をする。
「千花に何かしたら許さないからな」
咲さんは低い声で俺に答える。
「大丈夫だよ。そんなことはしない」
俺は咲さんの言動を想像しながら、話しかける。
「んじゃあ。私、寝るから」
咲さんはおやすみと俺に言った。
「おやすみ」
俺は咲さんに言って、電話を切った。
俺は改めて、千花の想いが強くなった。
過去は過去。今は今。
やれることはやろうと俺は二人と話して、誓った。
千花のことが好きだ。
俺は心の中で繰り返し言葉にした。