『…』


上手く言葉が出ない。


『やっぱり…あの人、ずっと湊先生に色目を使ってました。先生と話す時、いやらしい目付きで…私、いつか先生があの女に騙されるんじゃないかって、気が気じゃなかったんです』


慌てて話す葉子さんは、完全に落ち着きを失っていた。


『…あなたは何か誤解されてます』


僕は、あえて冷静を装いながら言った。


『誤解ですって?』


葉子さんの顔がキツくなる。


『…桜桃羽さんは、そんなことはしてません。僕に色目を使うなんて…あの人はそんなことが出来る人じゃないんです。僕に対しては、いつも普通に接してくれていました』


『普通じゃない、あんないやらしい目をして!』


『葉子さん。僕は、彼女の優しさや一生懸命さに自然に惹かれたんです』


『嘘!先生はあの女に誘惑されたことに気づいてないんです!あの人、他にも男がいるんですよ。私、つい最近見ました。会社の上司だっていうモデルみたいな男性と2人でいるの。話しかけたら慌ててましたから。絶対付き合ってますよ、あの2人』