桜桃羽さんからは、テレビを見て知ったからと、丁寧なお手紙と綺麗な品の良い花束が贈られて来た。


とても…有り難いと思った。


ずっとずっと素晴らしい作品を作り続けて欲しい…との内容に、また新たに自分自身の中に決意が湧いた。


あの日…桜桃羽さんに渡せなかった、彼女のために焼いた器。


今まで、ずっと誰にも見せずにいた。


でも…


僕はその大切な器を、今回の個展に思い切って出展した。


とても人気が高く、買いたいと言ってくれる人がたくさんいた。


他の作品は、ほぼ全てに買い手が着いたけど…


この作品だけは、絶対に売らないと決めていた。


売らない…じゃなくて、売れない。


あの人のためだけに作ったものだから。


それでも…作品として皆さんに見てもらいたかった。


たくさんの人に見てもらうことで、自分の気持ちを吹っ切れるとでも思ったのか…


そんなこと…


もちろん、出来ないとわかっていたのに。


矛盾してるな、僕は。


1番見せたい人には…


もう、2度と見てはもらえない。