でも…


私の中にずっとあった重たいものを何もかも脱ぎ捨て、軽くなった心は…


真っ直ぐ、麗央さんを選んだ。


それからは、何の迷いもなくなっていた。


心がおもむくままに…


私は、このバーに来たんだ。


バイオリンを弾く麗央さんはとても穏やかな表情をしていた。


美しくしなやかな動きで、それを奏で続ける。


そして…


その演奏は、余韻を残したまま終わった。


バイオリンを置いて、ゆっくりと近づいてくる麗央さん。


胸が…高鳴る。


『来てくれると信じてた』


そう言って、私を抱きしめた。


『スーツが…汚れてしまいます』


『そんなこと気にしなくていい。ずっと…こうしたかった。桜桃羽を…抱きしめたかった』


いつの間にか2人きりになっていた。


誰もいないたった2人だけの空間で、私達は…


自然に、当たり前のようにキスを交わしていた。