『いらっしゃいませ。お待ちですよ』


渋めのマスターが静かに言った。


私は、カウンターの反対側に視線を移す。


そこには…


スーツ姿の麗央さんが笑顔で立っていた。


『誕生日おめでとう』


口の動きでわかる。


そのセリフに、思わず涙が溢れて、胸が一気に熱くなった。


麗央さんは、バイオリンを肩に乗せて…


弓を構えた。


そして…


一呼吸おいて、弓を…引いた。


その瞬間、とても素敵な音色が流れ出て、その空間全てを感動で包み込んだ。


私もずっと立ったまま…


麗央さんから目が離せなかった。


あの時、あの夜に、私の傷んだ心にポっと温かい明かりを灯してくれた…


優しくも、力強さを感じる…素晴らしい演奏。


私は…


今日。


自分の気持ちに素直になって、麗央さんの元にやって来たんだ。


最後まで…


正直、私は迷ってたと思う。


3人とも…


本当に…素敵過ぎるから。