遥斗くんが選んでくれたのも、リップに気付いてくれていたことも感動しちゃう…とジーンとしていたら。


「衣織ちゃんお誕生日おめでとうございまーす」


突然、明るい音楽と声が耳に届いた。


「えっ……ありがとうございます」


やってきた店員さんにポカンとしていれば、“HappyBirthday Iori”と書かれたプレートがテーブルに置かれた。

そこには、ミニサイズのショートケーキ、チョコレートケーキ、フルーツタルトとシュークリームにエクレアがのっている。


「すごい…」


目が合った遥斗くんは優しく頷いている。

もう一度店員さんの方を向くと「彼氏さんがね、サプライズしたいからって。恥ずかしいみたいでお店貸し切りになってるの。だからごゆっくりどうぞ」と。

コソッと耳打ちされた。

「ありがとうございます」ともう一度お礼を言って、遥斗くんを見る。


「びっくり…。ありがとう」

「うん、なんかこっちこそありがとう…」

「えっ…?」


まさか「ありがとう」が返ってくるとは思わず首を傾げる。


「生まれてきてくれてありがとう。…俺と出会ってくれて、もっとありがとう」

「それはっ…私の…台詞だよ…」


しっかりと目を見つめて、はっきりと言う。


「遥斗くん、ありがとう」


ぼやけた視界の中で、きみの笑顔がキラリと輝いた。