「いらっしゃいませ」

こじんまりしたお店の中に入れば、にっこり笑顔で店員さんが迎えてくれる。

ウッドデッキで統一された店内に、お客さんは誰もいなかった。

「お好きな席にどうぞ」の言葉に頷いて、端っこのテーブル席に腰掛ける。


「わぁ…美味しそう」


メニューを開けば、カレーやパスタ、ドーナツにワッフルなどズラッと並んだ色々な写真が目に入った。


なんでも“小腹が空いた時に寄りたいお店”がコンセプトらしく、全体的に少量、低価格に設定されていてる。

迷った挙句、私はオムライスを、遥斗くんはたらこパスタを注文した。


出来上がったそれを美味しくいただいて、幸せを噛み締めていたら、「はい」と。 

遥斗くんに白い紙袋を差し出される。


「お誕生日おめでとう」

「ありがとう。…開けてもいい?」


「うん」と彼が頷いたのを確認して、中の袋を取り出す。

リボンがしてあるそれを丁寧にほどく。


「あっ、グロスだ…嬉しい」


出てきたのはパッケージが可愛い透明グロス。


「…うん。衣織ちゃん、いくつか種類持ってるでしょ?だから、あえて透明のに…しました」


恥ずかしそうにそう言う遥斗くんに笑みがこぼれる。


「ありがとう。毎日使うね」

「…うん。毎日使って」


首をいっぱい縦に振って、宝物となったそれを大切に仕舞う。