───パチッ、 そう、確かに一瞬ほんとの一瞬、目が合った。 ──ありがとう。 かすかに動いた菜乃花の口がそう言っているように見えた。 そして次の瞬間にはもう、菜乃花の息はしていなかった。 俺は、間に合わなかったんだ。 彼女のそばで泣いている、菜乃花の両親。 俺に気付くこともなく、ただひたすら泣いている。 少し見ない間に、おばさんはやせ細ってしまっていて、おじさんも、少し前に見かけた時よりも、ずっと老けて見えた。