正確には、どうして分かったんですか、と。そういう意味だけれど。

画面の中では、芸人が集まってくだらない話に花を咲かせている。げらげらと下品に笑い声を上げたり、無茶ぶりに悲鳴を上げたり、実に様々だ。

先輩は私の顔を物珍しそうにじっと見つめて、


「どうしてって――今お前、すげえ笑ってただろ」


と、あからさまに驚いてみせた。
彼のその反応に、こちらの息が詰まってしまう。


「私が笑っちゃいけないんですか」

「いや、何というか……珍しかっただけだ」


珍しい。笑っているのが?
記憶を掘り返してみると、確かに彼と生活を始めてから大笑いしたことはない。

一人思考の海で泳いでいた私を、彼が引き戻した。


「華の機嫌を取りたい時は、お笑いを見せればいいってことか」

「そうですね……私、M-1の審査員を務めるのが夢なので」

「壮大な夢だな」

「クラーク博士だって、少年よ大志を抱けと言ってますから」


審査員とまではいかなくとも、いつか直接観覧してみたいとは思う。
お笑いは好きだ。見ていると余計なことは考えずに済むし、くよくよ悩んでいたことも吹き飛ぶ。それに。


「静けさを誤魔化すには、お笑い番組が一番ちょうどいいんです」