禁断ってなんだ、禁断って。

真面目に相手をするのも馬鹿らしいけれど、勝手に脚色されて吹聴されるのはもっと避けたい。
私は「違うよ」と否定から入って、仕方なく解答を述べることにした。


「全然何にもない。ただ電車が同じだけ」

「へーえ、ほーお、ふーん」

「何その返事……」


納得がいっていないのか、彼女は私の瞳を覗き込むようにして口を曲げる。

そもそも、だ。そもそも、どうして鈴木さんと登校してきただけで噂になるのか。
いや、それも彼女が大袈裟に言っているだけで、噂にも何もなっていないのかもしれない。


「でもでも、電車が同じということは、その間二人きりってことでしょ?」

「……朝の通勤通学ラッシュの電車乗ったことある?」

「やっぱりその時間、愛を育んでいるんじゃないのかなあ~と疑念は残りますよねえ」


コメンテーターのように声色を取り繕って、彼女が横暴に話を進めていく。
そして隣の空いていた席に腰を下ろすと、持っていたビニール袋から菓子パンを取り出した。どこまでも居座るつもりらしい。

私は彼女を追い払うのを諦め、食事を始めることにした。
アスパラガスのベーコン巻きを咀嚼し、素朴な疑問をぶつけてみる。


「佐藤さんは、鈴木さ――鈴木先輩のことが好きなの?」