「あはは、それは華が悪いわねえ」


陽気な母の声が耳朶を打つ。
私は部屋の喚起をしながら、反射的に抗議した。


「何で私!? だって、コンビニ行こうとしただけだよ!」


一週間に一度、電話をするのが私たちのルールだった。日曜日の穏やかな午前。母にとっては、土曜日の夜。

先輩は、いつもは起きてすぐにジョギングへ出かけて、比較的短い時間で済ませて帰ってくる。でも日曜日だけは気を遣ってくれているのか、朝食をとってから出かけて、少し長めに走っているようだ。

連休が明け、五月も半ばに差し掛かった今日この頃、私はアパートの掃除に訪れていた。
一緒に行くと駄々をこねる先輩を振りきり、一人で清々しく空気を吸い込んでいるところである。

母に話しているのは、連休中のあれこれだった。
険悪ムード、とまではいかないけれども、若干喧嘩のようなものをしてしまったこと、そして「家出か」と引きとめられたこと。


「分かってないわねえ、華は」


どこか愉しげともとれる声色の母に、思わずむっとする。
私だけが悪いと言われるのも癪だ。そもそも、先輩のために色々提案しただけなのに。


「一太くんが怒ったのは、女の子が夜に一人で出歩くのが危ないからでしょ」