「神山、もう少しみんなと仲良くできないのか?

 別のクラスに居る君の双子の妹は友達も多く、いい子だ。

 妹のようになれとは言わないが少しぐらいはクラスに馴染んでくれないと先生も困る」

 先生は知っている。

 私がアルビノだから虐められていることを。

 でも、先生は私を責める。

 「誰にも苦手なことがある。

 先生も子供の頃は内気で、なかなか友達ができなかった。

 だから神山の気持ちは分かる。

 だけど、自分の殻に籠っていたって何もならないんだ。

 勇気を出して一歩を踏み込まないと。

 友達だってできないぞ。

 神山だっていつまでも一人でいるのは嫌だろ」

 「でも先生、誰も私を仲間に入れてくれません。

 私が人と違うから」

 「それはお前が壁を作っているからだろ。

 大丈夫、笑って『あそぼ』と誘えばみんなお前と友達になってくれるよ」

 「でも」

 「神山、『でも、でも』と言っていたって何も始まらないだろ」

 最後は少し怒り気味で先生が言った。

 だから、それ以上は何も言えなかった。



 ・・・・でも先生、私は何度も自分から『友達になって』って言ったんだよ。

 だけど、誰も私を仲間に入れてくれなかった。



◇◇◇



 私は変わらずみんなから虐めを受けている。

 女子からはバケツの水をかけられたこともあった。

 「何だ、神山。一人だけ雨に降られた格好をして。

 さっさと体育着に着替えて来い」

 「・・・・・はい」

 晴天の日に私だけびしょ濡れなんておかしいだろう。

 先生は私が虐められているのを知っている。

 そんな私が晴天にこんなに濡れているんだ。

 何をされたかなんて一目瞭然だろう。

 だけど、先生は私を注意するだけ。

 先生に注意をされた私をみんな指さして笑っていた。

 先生は気づかないふりをして黒板に授業で教えて内容を書いていた。



◇◇◇



 『神山さんは積極性がなく、クラスで浮いた存在になっています。

 もう少し、積極的にコミュニケーションを取れるようになるといいでしょう。

 勉強は努力家で成績も良いのですが、学校とはそれ以外を学ぶ場所なので神山さんには友人の素晴らしさを学んでいけたら良いと思います』



 私の通知表

 先生のコメントの欄にはそんなことが書かれていた。

 「私、今回あまり成績が良くない」

 由利は自分の通知表を見てがっかりしていた。

 「そんなことないよ。よく頑張ってるじゃん」

 すかさずお母さんが褒めた。

 通知表は五段階評価

 由利は一と二しかない。

 だって、テスト前に勉強しているところなんて見たことがないもん。

 当然の結果だと思う。

 「でも、柚利愛の方が全然良いじゃん」

 どうしてそういうことを言うのだろう。

 私はため息をつきたくなった。

 「あの子はいいの。由利がちゃんと頑張っているの、お母さんが分かっているから」

 何を見て『頑張っている』と言っているのだろう。

 私は対して見られることなく放り出された通知表を鞄の中に仕舞い、自分の部屋に戻った。

 どんなに頑張っても評価されない。

 でも、いつかは。

 そんな馬鹿なことを思って私は机について、教科書を開く。



 ああ、なんて愚かなんだろう。