入れ替わったら彼の愛情をつきつけられました。

☆☆☆

やっぱり石段を選んだのは間違いだった。


部屋の中で1人かけの小さなソファに座り、あちこちにできた擦り傷に消毒液を塗る。


せっかく大河のマンションでお風呂に入ったのに、ボロボロになってしまった。


でも、心は晴れやかだった。


陽菜と入れ替わってたった数日だけれど、それ以上のものを手にした気がする。


絆創膏を張り終えた美緒は冷蔵庫へ向かい、タッパーをひとつ取り出した。


空けてみると中にはロールキャベツが3つ入っていた。


1つを皿に乗せてレンジで暖め、頬張ってみる。


キャベツがトロトロにとろけていて、噛みしめると中から肉汁があふれ出す。


食べた瞬間思わず笑顔になってしまう。


「さすが陽菜さん」


今ごろ陽菜も大河の待つマンションに戻っている時間帯だ。


汚れて戻ってきた陽菜を見て、大河が大慌てしている様子が目に浮かぶようだ。


2人はこれから、同じ人生を歩んでいくことになるんだろうか。


考えるとやっぱりまだ少しだけ胸が痛んだ。


でも大丈夫。


これだけの作り置きをしてくれたんだから、それでチャラにしてあげられる。


「あ~あ、私もいい人ほしいなぁ」


ロールキャベツを食べ終えて再びソファに戻ってぼやいたとき、スマホが震えた。