入れ替わったら彼の愛情をつきつけられました。

そう言った陽菜は含みのある笑みを浮かべていた。


いつもの朗らかな笑顔とは程遠い、ちょっと意地悪な女の笑みだ。


その笑みに驚き、美緒は目を見開いた。


「陽菜さん、もしかして私が柊さんのことが好きなこと……」


「会社で会ったときには気が付いていました。大河はモテるので、そういう女性って多いんですよ」


陽菜はため息交じりに言った。


そう聞いた瞬間全身から力が抜けていくような気分になった。


陽菜は最初からなにもかも気がついていたみたいだ。


その上で遠回しに牽制できるなんて、かなり手馴れている。


少し怖くなって身をすくめると、陽菜は「そんなもんじゃないですか? みんな」と、首をかしげて聞いてきた。


「……そうですね」


美緒は頷く。


給湯室の彼女たちも、そして自分自身も。


嘘の噂を信じて言いふらしたり、分かれさせようと画策したり。


私たちはみんなお互い様で生きているのかもしれない。


「それに、美緒さんにいるじゃないですか。素敵な王子様が」


「王子様?」