入れ替わったら彼の愛情をつきつけられました。

あまりに黙り込んでいる美緒に、大河はそう言って目を伏せた。


肩を落とし、指輪をしまおうとする。


「待って!」


とっさに大河の腕を掴んでいた。


大河は驚いた表情を美緒へ向ける。


「ちょ……ちょっとだけ、待っていてほしいの」


大河の腕を掴む手が微かに震えた。


ここで自分がプロポーズを断れば2人は破局する。


そんな考えが一瞬よぎるが、すぐにかき消された。


陽菜が用意してくれた数々のおかずを思い出す。


あの子には幸せになってほしい。


ちゃんと大河からのプロポーズの言葉を聞かせてあげたい。


そんな焦燥感に駆られてソファから立ち上がる。


「絶対に戻ってくるから、その時にまた同じ言葉を聞かせてくれる?」


大河は美緒を見つめて瞬きをする。


しかし、すぐに笑顔を浮かべた。


「わかった」


そして、大きく頷く。


美緒は大河へ頷き返し、マンションを出たのだった。