その瞬間目の前に大きな壁があって、鼻の先からぶつかってしまった。
「ぶっ」
と情けない声を出して立ち止まり、壁を見上げる。
そこに立っていたのは同期入社の森住深(モリズミ シン)だ。
「ちょっと大きな図体でぼーっと立ってるのやめてよ」
美緒は180センチ近い深を見上げて文句を言う。
深は明るすぎない茶色に髪を染め、毛先を遊ばせている。
右耳にはシルバーの小ぶりなピアス、ネクタイは未着用でシャツの第一ボタンは外され、仕事をする姿とは思えなかった。
これが制作部のエースと言われているのだからわからない。
深いわく、イベント会社たるもの常識にとらわれてばかりじゃいけない。
新しいものにくらいついていく精神が必要ということらしい。
言いたいことは理解できるけれど、会社にいるときくらいは社会人らしい姿をしてもいいんじゃないかと思っている。
「お前が前も見ずに出て来たんだろう」
そういわれてムッと睨みあげる。
しかしそこには深の無駄に整った顔があるだけで、余計にイラついて視線をそらした。
このチャラチャラした男が大河に継ぐ社内人気ナンバー2だなんていまだに信じられない。
そんなことを考えたとき、突然深が美緒の横の壁に手を突いた。
「な、なに!?」
とっさのことで反応ができず、逃げ遅れた美緒はそのまま深の両手で壁ドンされ、行く手を阻まれてしまった。
突然の至近距離に心臓がドクンッと大きく跳ねる。
美緒の恋の相手は大河だったが、顔のよさだけで言えば深だって負けていない。
イケメンに至近距離で見つめられるという状況にまったく慣れていない美緒はオロオロするばかり。
「ぶっ」
と情けない声を出して立ち止まり、壁を見上げる。
そこに立っていたのは同期入社の森住深(モリズミ シン)だ。
「ちょっと大きな図体でぼーっと立ってるのやめてよ」
美緒は180センチ近い深を見上げて文句を言う。
深は明るすぎない茶色に髪を染め、毛先を遊ばせている。
右耳にはシルバーの小ぶりなピアス、ネクタイは未着用でシャツの第一ボタンは外され、仕事をする姿とは思えなかった。
これが制作部のエースと言われているのだからわからない。
深いわく、イベント会社たるもの常識にとらわれてばかりじゃいけない。
新しいものにくらいついていく精神が必要ということらしい。
言いたいことは理解できるけれど、会社にいるときくらいは社会人らしい姿をしてもいいんじゃないかと思っている。
「お前が前も見ずに出て来たんだろう」
そういわれてムッと睨みあげる。
しかしそこには深の無駄に整った顔があるだけで、余計にイラついて視線をそらした。
このチャラチャラした男が大河に継ぐ社内人気ナンバー2だなんていまだに信じられない。
そんなことを考えたとき、突然深が美緒の横の壁に手を突いた。
「な、なに!?」
とっさのことで反応ができず、逃げ遅れた美緒はそのまま深の両手で壁ドンされ、行く手を阻まれてしまった。
突然の至近距離に心臓がドクンッと大きく跳ねる。
美緒の恋の相手は大河だったが、顔のよさだけで言えば深だって負けていない。
イケメンに至近距離で見つめられるという状況にまったく慣れていない美緒はオロオロするばかり。



