「ど、どうしてって……」


今日の出来事を思い返せばわかるはずだ。


そう言おうとしたが、次の瞬間大河の両腕に包み込まれていた。


「陽菜、普段から全然わがままを言ってくれないから不安だったんだ」


え?


それは予想外の言葉だった。


「いつでも完璧に家のことをこなして、仕事もして。疲れているはずなのに、笑顔を絶やさなくて。だから俺、陽菜の安らげる場所になりたいと思ってた」


あぁ、そうだったんだ。


美緒はグッと下唇をかみ締めた。


2人の間にはわがままだって受け入れられる信用が存在していた。


美緒と大河の間にはない、見えない絆。


美緒はそっと大河から身を離し、そして考えた。


陽菜は今どうしているだろうかと。