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仕事のメールをすべて終えた美緒はソファから立ち上がり、大きく伸びをした。


普段はパソコンでやってしまう作業をスマホの小さな画面でやるとここまで疲れるのかと痛感する。


そして一息つくと部屋の中を見回した。


陽菜の私物はあえて見えないふりをしてみると、改めてここは大河の部屋なのだと感じた。


白と黒でまとめられたシックな家具。


テレビ横のドアを開けてみるとそこは寝室になっていた。


キングサイズのベッドに灰色のシーツがかけられている。


ベッドサイドには趣味のいいテーブル。


その上には不似合いに可愛い、エメラドグリーンの目覚まし時計。


それを見た瞬間陽菜のことを思い出した。


あの時計は陽菜の趣味で買ったものだろうと、すぐにわかってしまった。


それからバス、トイレと場所を確認していく。


どこも綺麗に掃除されていてまるで一流ホテルのようだ。


寝室の横にはもう一部屋あって、そこは6畳ほどのフローリングになっていた。


大きめのデスクに座り心地のよさそうな椅子。


大きな本棚が2つ並んで立っていて、イラストやデザイン関係の本がズラリと並んでいる。


ここが陽菜の仕事場らしい。


美緒はグルリと室内を見回して机に近づいた。


一枚いたでできた趣味のいい机の上には2台のモニターをノートパソコン。


どれもとても高そうなものだ。


もしかしたら大河に買ってもらったのかもしれない。


パソコンの横に視線を移してみると、写真立てが置かれていた。


どこかの公園をバックにして微笑んでいる大河と陽菜が写っている。


美緒は軽く下唇を噛んで写真立てを伏せたのだった。