「本当は浮気なんてするつもり無かったんだ」
旬佑先輩はそう言うと、ペタンと床に座り込んでしまう。
「春夏から告白されて、架子は束縛されたくないって言ってたなって思うとつい魔が差して…」
「そんなの言い訳だよ。
束縛されたくない、と浮気していいは同義語じゃないよ」
「わかってる…。」
叶ちゃんは怒っているのか、旬佑先輩に同情も同調も優しさも今は見せずに言葉を紡ぐ。
それが本当に正論で、私からは何も言うことは無いな。
「とにかく、ゆっくり考えなよ?
あと、おりちゃんが架子ちゃんから預かったって返しに来たから」
「あ、生徒手帳です」
叶ちゃんの言葉に続いて私も架子ちゃんから預かっていた生徒手帳を返すと
旬佑先輩は切なく笑った。
その顔がいつもの明るい旬佑先輩ではなくて私まで重たい気持ちになる。
「じゃあ僕は準備に戻るよ。
おりちゃんは気をつけて帰るんだよ?
旬佑もとりあえず準備に戻ろう」
そう言っていつものように優しい笑顔に戻った叶ちゃんに促されるまま
私も旬佑先輩も自分のすべきことに戻ることにした。
この感じからすると、叶ちゃんも旬佑先輩と友達やめるということはなさそうで一安心した。


