椛は私と叶ちゃんを見ると、玄関に立ち塞がって睨んでくる。
「谷くんからおりちゃんが呼び出されたから送っていこうと思って」
時が止まっている私の代わりに叶ちゃんがそう説明してくれると、椛はもっと険しい顔になった。
「どこに呼び出したんだよ」
「街だよ
治安悪いから送ろうかと思って」
「はぁ?ふざけるな!」
叶ちゃんと言葉を交わした椛は、そう怒鳴ると私の腕を掴んで家の中に引っ張り出す。
そんな椛の手を叶ちゃんが掴むと2人の睨み合いが始まった。
「おりちゃんは今から彼氏に会いに行かなきゃなんだからその手はなしなよ」
「黙れ。あんなクソ野郎のところなんか行かせねぇっつってんだよ」
「クソ野郎って…それはおりちゃんが決めることだよ」
「本当使えねぇなお前。
こい、おりは」
叶ちゃんに冷たい目を向けた椛は
叶ちゃんの手を折れるんじゃないかと思うほどの力で掴んで離すと
私の腕を引いて歩き出す。
「椛!」
「も、椛っ痛いよ」
椛に掴まれた腕が痛くて訴える私と、止める叶ちゃんの声なんて聞かず
椛は私を半分引ずるような形で部屋に引きずり込んだ。


