その日の夜。
夏祭りに叶とおりはで行ったのに、先に帰ってきたのは叶だけだった。
「おい、おりはは?
まさか置いてきたんじゃねぇだろうな」
あんな変な輩がいっぱいいる夏祭りに置いてきたとあれば実の兄でも容赦しない。と、叶に問いただすと
叶は切ない顔で笑った。
「俺たちと行ったけど、谷くん?が来て2人は別行動したんだよ。
だから帰りも別々」
「はぁ?」
叶の言葉を聞いて俺はまた苛立ちが出てくる。
叶の友人とかいう旬佑も
おりはの友達の架子も俺はまぁおりはのそばにいても害はないと納得しているから何も言わないが
叶が着いていながらなんで谷なんかと2人きりにさせるんだよ。
ていうか、叶はおりはのことが好きなはずだろ。
「もしかしたら、おりちゃんがちゃんと谷くんのこと好きになるきっかけになるかもしれないし、邪魔できなくて」
切ない顔で言う叶の言葉は全く説得力がない。
そもそも好き同士じゃないのに付き合わせるなんてろくな男じゃないだろ谷は。
「本当役立たずだなお前」
「あはは…僕はおりちゃんの幸せが1番だよ」
何言ってんだよ。
幸せ願うなら無理やり付き合わせるような男と2人きりにするなよバカかよ。
そう思う俺の気持ちなんて知らない叶は、とぼとぼと落ち込んだまま部屋へと戻って行った。