【椛side】



今日は夏祭り。
昼間にコンビニに行った帰り道でさえ祭りムードなのが鬱陶しい。



おりはは毎年のように叶と行くんだろうな。






「あっちー」






こんなクソ暑い日によく祭りなんて人の多いところに行こうなんて思うな。

頭狂ってんじゃねぇの。


なんて考えていると、後ろから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。



面倒くせぇ。






「木下!」



「なんだよ」






俺を苗字で呼ぶようなやつから、気軽に絡まれることは無いから振り向くと

この前家に来て、おりはの彼氏だなんだと言ってた男がいた。



俺に用か?なんの?俺は何もない。



そんなことを自分の中で考えて解決して、無視して歩き出すことを決めた。


そもそもこんな奴のためにこのくそ暑い中足を止めて話を聞くギリもないしな。






「ちょっ!待てよ!
木下っておりはのこと好きなんだろ?」






俺が無視して歩き出しても、そう言って食い下がってくる男。


そもそも、おりはなんて気安く呼んでんじゃねぇよ。


それでも俺は立ち止まらず無視して歩き続けるも、着いてくる。






「由佳子って知ってるだろ!
お前のせいで由佳子が変になったんだぞ!」



「はぁ?」






爽やか、優しい、イケメン、王子。


こいつについて調べたらそんなことばかり出てきていたが、今の怒鳴り声はその印象と全く違って思わず立ち止まってしまった。



改めて足を止めて顔を見ると、いつもの笑顔を貼り付けた顔はなく、俺に完全に敵意むき出しの顔だ。






「悪いけど、そんなやつ知らねぇ」






王子だなんて呼ばれてるやつでもこんな顔するのか。


なんて興味が湧いたが、こいつの言う由佳子なんて知らず、そう答えると


その顔はさらに怒りで歪んだ。