「こんな所あったんだ!」
周りは森に囲まれたこの本当に小さな空き地は私も全く知らなかった。
こんなところ知ってるなんてすごいなぁなんて思いながらその景色を眺めていると
丁度花火がヒューっと空に舞った。
「すごい!綺麗!」
「でしょ?毎年花火はここなんだ」
何にも邪魔されない花火に感激する横で、少し悲しげな顔をする谷くんには気付かないふりをした。
きっと色んな思い出があるんだろうな。
「おりは、好きだよ」
まだ切ない表情の残った谷くんは私にそういうと
優しく引き寄せて、抱きしめてくる。
人にこんなふうに抱きしめられたことない私は驚いたけど、谷くんの胸から聞こえてくる鼓動が心地よくて拒否することは出来ない。
「谷くん、好きになってくれてありがとう」
まだ私は好きだと返すことは出来ないから。
だからせめて感謝だけでもと、伝えると
少しだけ嬉しそうに笑う谷くん。
そして、谷くんは私の顎を引き寄せて
そっと顔を近づけてきた。
「っ?」
何を考える暇もなく頬に触れた柔らかい感触に一瞬何が起きたかわからずに固まる私。
「あはは、可愛い」
そんな驚いた私を笑ってまた抱きしめる谷くんに、ようやく今頬に口付けされたことを理解する。
驚いたけど、頬にキスされるってこんな感じなんだ…なんて変に冷静な私の頭はそんなことを考えていた。


