驚いた。


椛が父親と同じデザイナーになろうとしてたなんて。



他でも言われてみたら一緒に暮らしてても椛のプライベートは謎に包まれてて、密かに作品を作っていたとしても何らおかしくない。






「とにかく俺はこれまでもこれからもおりは第1で考えるからな」






そう言い放った椛は有無を言わせないという顔で僕たちを見た。



そんな姿を見たら何も言える訳もなくて
僕は頷くしか無かった。




それは椎も同じようで、親なのにおりちゃんを守ることが出来ないのに気づいている椎は1度目を瞑ったあと


椛の肩に手を置いて笑う。






「おりはのこと、頼む」



「あぁ」






きっと本当は誰より自分が守りたいはず。


でもおりちゃんを救えるのは椛だけ。
それをあんな間近で見たらそう言うしかないだろう。




椎の言葉に頷いた椛は僕たちに背を向けておりちゃんの部屋へと向かっていったのだった。





僕は負けたな。
おりちゃんへの愛も。
自分を犠牲にすることも。



頑張ってね椛。




僕にできなかったことを最後まで成し遂げて欲しい。



そう願って。