そんな私の反応を見て、架子ちゃんは本当に怒るでもなく責めるでもなくただ優しく微笑んでくれた。






「そっか…。でも、王子と付き合おうって思えるほどには気持ちが変わってきてるんじゃないかな?」



「……わからない。
でも、昨日椛と今の彼女見て醜い感情が湧いてきたの」



「どんな?」



「私は助けてくれなかったとか、私に似た境遇の女の子なら私でいいじゃんとか、幸せそうでよかったとか、でもやっぱり幸せになって欲しくないとか…。
矛盾してるよね、幸せを願えないなんて最低だよね…。」






所詮もうただの他人なのに。


と言葉をつけると架子ちゃんは悲しそうな顔をして私の手を握る。






「そんなことないよ。
おりはが経験したことは簡単に切り替えれることじゃないし、今こうして少しでも元気でいられるのはすごい努力だと思う。
だからそれを傍で支えてくれなくて彼女作ってる木下くんに怒るのはしょうがないよ」



「でも…」



「おりは、人間そんなに綺麗な感情ばかりじゃなくてもいいんだよ?
おりはは今までずっと綺麗過ぎただけなの、今やっと綺麗じゃない感情も知っていってるんだよ」



「でも…」



「汚い感情は私にもあるし、誰でも持ってるから気にしすぎないで?」






架子ちゃんは優しくそう言ってくれるけど、私は汚いのは心だけじゃなく身体もなんだもん。


だからせめて心くらいは…。




そう考えた途端、突然おじさんとの行為がフラッシュバックしてきて息が苦しくなっていった。




もうこんな思い、したくない…。