「おりちゃん、もし嫌なら別れたくないって言ったがいいよ?」






そうしたらきっと椛は、別れないだろうから。
と、おりちゃんに言うも、おりちゃんは首を横に振るだけ。







「ダメなの。
私達一緒にいたらダメなの。」



「どうして?」



「あの時のこと思い出しちゃうから。
私も理不尽に椛に当たっちゃうし、椛もずっと苦しんじゃう」






ポロポロと涙を流しながらそう言うおりちゃんが切なくて


あの事件で辛い思いしたのはおりちゃんなのに、椛への配慮もするなんて。




でもきっと椛も同じような気持ちで別れを告げたんだろうな…。






「強くならなきゃだよね…」



「そんな…」



「しっかりしないと…」






自分に言い聞かせるようにそう呟くおりちゃんに僕は何も声をかけられなかった。



無責任な言葉で『僕が守るから』なんて僕に言える度胸がない。





おりちゃんは今でもしっかり学校にも行って、苦しむのは家でだけなのに…。




頼りない幼なじみでごめんね…。



泣いているおりちゃんにタオルを渡しながら心の中で僕はそう謝った。