「そうだよな。そうなるよな」

頼りないような弱々しい声で椿は言った。罪を認めてくれたことには安堵したけれど、悪気はなかったようにしか聞こえてこない。

「本当はこんなことしたくないんじゃないの?」

「ああ。したくなかった」

つまり無意識の内にやっていたということ。どうやら咲結の予想はあたったようだ。

「じゃあどうして?」

「それは……」

椿はそこで言葉を切る。初めて言葉を交わした日には理由を聞いても答えてはくれなかった。たぶん、今回もそうなのだろう。

ならば少しでも言いやすいように。

「祖父を失ったから?」

椿はなぜそれをとでも言うように後ずさる。動揺を隠せないのも無理もないだろう。

「風の噂だよ」

本当は咲結から聞いたことなのだけれど、そう言えばきっと怪しく思われるだろう。それを聞いた椿は諦めたような笑みを浮かべた。

「そうだ。俺は二年前に最愛の祖父を失った。あのメガネ屋も今は経営してなくて、俺が勝手に使ってるだけだ。嘘をついてすまない」