夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「胡桃が最近、椿と一緒にいたこと」

そう言って仁菜はなんとも言えない複雑な笑みを浮かべた。どうやら私が椿と関わっていたことに怒っているらしい。

「それは……ごめん」

椿があんなことしてたなんて知ってたら優しくされるのも拒絶していたはずなのに。そのことへの申し訳なさと罪悪感が生まれてくる。

「謝らなくていいよ。胡桃はなんも悪くないんだから」

控えめな笑みを浮かべながら仁菜は言った。たぶん、私に気を使ってくれているのだろう。心配されないように作り笑顔をはりつける。

「ただ不思議だね。人の物盗んだり暴力振るったり、優しくしたり。訳わかんない人だな」

しばらくしてから仁菜は独り言のように呟いた。

ごもっともだ。ましてやその理由を誰も耳にしていないのも不可思議である。

「ほんと、ミステリアスだよね。前髪で目を隠してるところも」

「そうそう。隠す意味あるのかな？せっかく顔立ちいいのにもったいない」

二人して不満そうな顔を浮かべながらため息をついた。静寂に包まれている部屋の中、さっきよりも少し強くなった雨の音だけが窓越しに響いてくる。気まずい沈黙が私達の間に漂っていた。

「てかさ、メガネかけないの？」

唐突に仁菜は聞いてくる。世間話でもして気分を切り替えようとしているのだろう。