夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

咲結が話してくれたのはそれで全てだった。

中学校も一緒だったなんて、しかも私をいじめていたなんて、夢でも見ているのではないか。

そうやって自問自答を繰り返したくなるほどだった。

怒りのあまり椿から貰った淡いピンク色のメガネを思い切り投げ捨てた。

プレゼントなんていらない。もう関わりたくもないし、顔も見たくない。

暗い暗い闇の中、季節外れに実り始めた胡桃の実は少し成長したかと思ったら腐り始めたのだった。


翌朝、ぼんやりと重たい瞼を開けると、パラパラという雨の音が窓越しに聞こえてきた。まるで昨日少し晴れていた時間があったのが嘘のようだ。とはいえ、どんな天気であろうと学校に行く気にはなれない。椿と目を合わせたくないからだ。

噂をすれば玄関から聞こえてくるインターホン。もうそんな時間だっけとスマホで時刻を確認してみれば六時半だった。いつもならすでに家を出ている時間だ。どうやら昨日のことで疲れていたようだ。

私は気づかれないよう瞼をぎゅっと閉じて寝ているふりをする。そうして時が過ぎるのを待っていた。

それから数分経ち、もう行ったよねとそわそわしながら起き上がる。

部屋の中は電気をつけていないので薄暗い。物はあまり置いてなく、クローゼットと本棚と勉強机と今いるベッドだけだ。

そんな中に昨日、床に投げつけた淡いピンク色のメガネがぽつんと転がっている。

椿ってどうして私達の人生をめちゃくちゃにしたのだろうか。単純に考えれば誰でもいいからぶん殴ってストレスを発散しているだけなのかもしれない。でも優しい椿のことだもの、何かしら言いたくない理由があるのだろう。大嫌いなやつのことなんかほっとけばいいのに心の中では椿のことばかり考えている。