夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

それがまさかの椿だった。予想外すぎて今でもその事実を受け入れられない。私には優しくしてくれて、ちょっと強引に手を引いてきたりもしたけれど、淡いピンク色のメガネをプレゼントしてくれた。授業のノートのコピーやプリントだって持ってきてくれた。

その心の広さといったら青く澄んでいて、果てしない海のようにどこまでも広がっているように感じていた。抱き締められた後からは胸がざわざわしていた。

なのに……。

あんな椿が仁菜をいじめて自殺に追いやり、今度は咲結を気絶させてロッカーに閉じ込めていたなんて。

本当に信じらんない。椿なんか大嫌い。なんで優しくしたりしたのよ。訳わかんない。

咲結が話してくれたのはこんな感じのことだ。

始まりはちょうど二ヶ月前の昼休み、椿が突然に仁菜の鞄を盗んでゴミ箱に投げ捨てたらしい。

それをクラスの人はしつこく理由を聞いたのだが、教えてくれることはなかった。先生に聞いた人もいたらしいが、個人情報だからと教えてくれなかったらしい。その結果、椿、本人と先生以外は誰もその理由を知ることなく、いじめだらけの日々は始まってしまったのだった。

最初は物を盗むばかりだったのだが、だんだんエスカレートしていって、自殺する数日前には暴力を振るわれていたことが多かったらしい。

噂に聞くと中学校でもそんなことをやっていたみたい。私が覚えていないだけなのだが、中二の時『胡桃って固いだろ?だからこうやって……』と私のお腹を思い切りぶん殴ってきた人でもあった。痛がってる私を気にも止めず、彼はへらへら笑いながら高らかに『砕けばいんだよ。ほら簡単だろ?』なんて言っていた。