夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

咲結、今から助けに行くよ。

心の中でそう呟いてから教室を出る。どこにいるのかもわからないのでとりあえず咲結の教室に行くことにした。

いじめが穏便に済まされてからは話していない。顔をあわせることすらも一年三ヶ月ぶりだ。

自分の教室がある三階から二階へと降り、渡り廊下を使って隣の校舎へと行く。それから右に曲がれば咲結の教室だ。同時に椿と仁菜の教室でもある。

教室に電気はついておらず、薄暗くなっていた。人は誰もいないみたいでちょうど教室に鍵を閉めている人がいた。

椿だ。六月中旬となり、夏服に更衣を終えている人も多い。私もちょうど一週間前に更衣をした。だが彼はまだしないらしい。寒がりなのか、いつもと変わらない黒い学ランを着ている。首のフォックは外れていて、着崩ししているように見える。

椿は帰ろうとこちらを向いた。ところが、私がいたことに驚き、後ずさる。その拍子に持っていた鍵を落とした。椿はそれを気づかなかったのかのように私から逃げるように去っていった。その間にチッと舌打ちの声がが私の耳に冷たく響いてくる。何かがおかしいと思った。

シーンとしている廊下に取り残された私と教室の鍵。不思議な違和感を感じながら床に転がっていた鍵を拾った。

咲結はどこにいるのだろうと、鍵を閉められた教室の中を引き戸の窓ガラスから覗いてみる。