彼女はこくりと頷いてから一つ、息をすうっと吸い込む仕草をしてからこう言った。
「幽霊は霊感のある人だけにしか見えないの」
確かにそうだ。しかし、私に霊感はない。どうして見えるのだろうか。今思い当たるのは紡神社に祈ったから、というたったそれだけの拍子抜けしてしまいそうな理由。
「だからね、昨日の昼休みこっそりクラスを覗きに行ったの。そしたら……」
疑問の言葉を浮かべている私をお構い無しに仁菜はそこまで言って言葉を切った。そして少々の沈黙が流れる。
「無理して話さなくていいよ」
そんな彼女を気にかけたつもりでそう言ったのだけれど、首をぶるぶると振り、拒まれてしまった。
「梅野咲結って子がある男子に蹴飛ばされてたの」
「へ?」
私は息をのみながら驚きの声をあげた。蹴飛ばされてたという事実ではなく、聞いたことのある名前が出てきたことに。
「それって……」
「そう。中学のときに胡桃をいじめてた一人。運悪くこの高校に来てたみたい」
そう言われた途端に今まで決めてきていた、いじめられている人を助けようという決心は灰になってバラバラと崩れてしまった。
「幽霊は霊感のある人だけにしか見えないの」
確かにそうだ。しかし、私に霊感はない。どうして見えるのだろうか。今思い当たるのは紡神社に祈ったから、というたったそれだけの拍子抜けしてしまいそうな理由。
「だからね、昨日の昼休みこっそりクラスを覗きに行ったの。そしたら……」
疑問の言葉を浮かべている私をお構い無しに仁菜はそこまで言って言葉を切った。そして少々の沈黙が流れる。
「無理して話さなくていいよ」
そんな彼女を気にかけたつもりでそう言ったのだけれど、首をぶるぶると振り、拒まれてしまった。
「梅野咲結って子がある男子に蹴飛ばされてたの」
「へ?」
私は息をのみながら驚きの声をあげた。蹴飛ばされてたという事実ではなく、聞いたことのある名前が出てきたことに。
「それって……」
「そう。中学のときに胡桃をいじめてた一人。運悪くこの高校に来てたみたい」
そう言われた途端に今まで決めてきていた、いじめられている人を助けようという決心は灰になってバラバラと崩れてしまった。


