椿はしばらく沈黙して私を抱き締めるのをやめながらそう言った。申し訳なさそうな笑みを浮かべている。

きっと未だに前を向けない私のためを思って言ってくれたのだろう。

「うん、わかった」

小指で涙を拭いながら控えめな笑みを浮かべて私は言った。

その様子を見て椿は肩をすくめてから、背中に背負っていた藍色のリュックから、何枚かの紙の束を取り出して、差し出してきた。

「これ、五日分のプリントとノートのコピー」

私はそれを反射的に受けとる。見ると、柔らかく丸みを帯びた字がぎっしりと並べられていた。しかも書いている内容も読みやすくてわかりやすい。まるでノートのお手本のようだ。

「すごいね。こんなまとめ方、私にはできないや」

「ま、俺にかかりゃこんなもんだ」

照れ笑いをしながら椿は言った。

それにしてもまだ関わって間もないはずなのに、どうしてそこまでしてくれるのだろうか。嬉しさと情けなさと申し訳なさが胸の奥から込み上げてくる。

「ごめんね。迷惑かけちゃって。どうしてそこまでしてくれるの?」

「迷惑じゃないさ。俺がそうしたかっただけだから」

椿は躊躇うことなく、まっすぐにそう言った。とはいえ、私に気をつかって言ってくれてるのだろう。いい加減泣いてばかりいないで前を向いていかないといけない。