今はマーブル色のセーターに黒色のズボンを履いている。どちらも七分丈で今の季節にはぴったりの部屋着だ。とはいえ、その服装で人前に出ていっても問題はない。私が勝手に部屋着と呼んでいるからだ。

インターホンが鳴る。椿が尋ねに来た記しだ。私は階段をかけ降りてドアを開けた。

その様子を見て、彼が驚いたように後ずさるのも言うまでもない。

「久しぶり。元気だったか?」

五日も顔を出せないでいたはずなのに、彼は相変わらず穏やかな口調で言う。それがとてつもなく私には温かく感じて思わず、嬉し涙が出ていた。

「お前、本当泣き虫だな。大丈夫か?」

笑みを浮かべながら椿は言う。

泣いている顔を見せたくなくて小さく頷きながら俯く私に、彼は優しく抱き締めてくれた。

心臓がドキリと鳴り、突然の思わぬ事態に思考が停止する。

「ごめんな。胡桃の友達、助けれなくて」

助けれなかったのは私の方だ。椿は仁菜と友達ではなかったはず。でなければ、私がこのイケメンっぽくってミステリアスな顔を忘れるわけがない。

警察官の息子だからそういうことを言うのかもしれないけれど、

「うんん、東山君は悪くないよ」

気づけば私はそう言っていた。

「それでも、そういうことにしといてくれ」