夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

そんな私を見て椿は笑みを浮かべている。前髪で目が隠れているからか、少し不気味に見えた。

「東山君はさ、どうして前髪長くしてるの?」

答えたくないことなのかもしれないけれど、最初から不思議に感じていたことだし、気づけばそう聞いていた。

名字で呼んだのはまだ話なれてないし、下の名前で呼んでいいのかもわからなかったからだ。

「見たくない」

小さく呟くように椿は言った。

「へ?」

しっかり聞こえてこなかったので私はそう聞き返した。

すると椿はしまったというような顔をしてから苦笑いをして「いや、なんでもない」とごまかしてきた。

もしや聞いたらいけなかったことだったかもしれない。訳がわからないけれど深入りするのはよくないのでこれ以上聞くのはやめておくことにした。

外の方を見る。まだ止まない雨が途切れることなく、地面に打ち付けていた。

そういえば思いのままに神社へ行っていたので、傘を家に忘れてきてしまった。短い距離とはいえ、これ以上濡れてしまうと風邪をひきそうだ。

椿はちらりと時計を見てから外に出ようとする。私もそれについていった。

「家まで送らせて」