夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

そう思った途端、胸が締め付けられるような感覚になった。

私は今、昨日会ったばかりの人と手を繋いでいる。何だか予想外すぎて心が落ち着かない。

「そのメガネ、度が合ってないんだろ?」

「は、はい」

まさか本当にばれてるとは。いや、一目見ただけでわかるわけがない。普通は何度も見たってわからないはず。

「やっぱりな。六年も使ってたみたいだし」

確かに六年も使っていたら度が合わなくなるのも当然のことかもしれない。実際私もそうだし、ここは勢いのまま彼についていくしかないか。

「雨強くなってきたから急ぐぞ」

椿はぶっきらぼうにそう言って、引いていた私の手を握り替えしてから、ゆっくり走り始める。

心臓が口から飛び出すかと思った。男子と手を繋ぐことすら初めてなのだから。

ザアザアと降り続く雨の中、人が二人並んで通れるぐらいの細い道ばかりを抜け、たどり着いたのは私の家のちょうど斜め裏にあるごく普通のどこにでもありそうなメガネ屋だった。

「ここ、俺のおやじが経営してるんだ。で、俺が時々店番頼まれる。今は誰もいないから気にしないで」

椿に引かれていた手がぱっと離され、解放感と同時に寂しさを覚えた。

椿に続くように私はメガネ屋に入る。

「お邪魔します」