夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

「また会ったな」

椿は祈り終えたように合わせていた両手を離しながら呟くようにそう言った。

私達の他には誰もいないので私に向いて言われたことだと理解しながら「昨日ぶりですね」と言った。

「やっぱ、敬語はやめてくれないか」

確かに同学年なのに敬語で喋るには気まずさがある。私自身初対面の人は苦手でいつの間にか敬語で喋っていた。人から話しかけられるのも珍しいことなんだから愛想良くしないと。

「そうだよね」

苦笑いまじりに私は言った。

すると、突然彼は私の頭をくしゃくしゃにしてきた。私はくすぐたくって笑っていると、

「いや、また泣いているような気がして」

口角をあげてそう言うから私は小指で目に触れてみる。確かに涙の雫が溢れてきていた。

気がするということは彼に私が泣いていたことに気づいてはいないのだろう。ただの勘みたいなものだと思う。髪で目が隠れているのだから当然だ。

「よくわかったね。見えてないはずなのに」

そう言って一瞬後悔する。上から目線にいってしまったかもしれない。きっといい言葉の使い方が見つからなかったのは、コミュニケーション能力が低いからだろう。

「ああ、見てはいない。ただそんな気がしただけさ。お前は泣き虫だな」

椿は私の偉そうな言葉を気にも止めず、穏やかにそう言った。