夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

それなりにいいことをすれば願いが叶い、お寺を傷つけるなどの悪いことをすれば天罰として、地獄に無理矢理連れていかれるらしい。母が私達の幼い頃に教えてくれたことだ。

雨の中、石畳の地面を歩き、お寺の近くまで行く。平日だからか人はおらず、静寂に包まれていた。

お賽銭をさすがに入れすぎかと思いながら五百円も入れて、目を閉じ、手を合わせて祈る。

どうか、仁菜にもう一度会わせてください。

近くにいるかもしれない仁菜にも届くように強く、強く祈る。その間、梅雨の季節特有の生ぬるい風が私のボブの髪をなびかせた。

しばらくして、ゆっくりと目を開けて、合わせていた両手を下ろす。私は家に帰ろうと、お寺に背中を向けようとする。

心臓がビクリと跳ねた。私の隣にはツーブロックの髪をザアザアと降り続く雨に濡れながら、静かに手を合わせて祈る椿がいたからだ。

私の髪も制服もいつの間にか雨に濡れていた。緑色のブラウスは雨に濡れても透けたりせず、水をはじく素材なので安堵した。

椿は昨日と変わらず、両目を長い前髪で隠している。きっと少なからず理由があるのだろう。とはいえ、聞かれたくないことかもしれない。イケメンっぽさが崩れてしまうようにもったいないと思うけれど、自分の意志のもとやったんだろうから仕方ないと思う。

彼は湿度も気温も少し高い中、長袖の青いパーカーに黒いジーンズを履いていた。暑くないのだろうかと心配になった。