夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

お好み焼きが両面、濃い狐色に染まったので火を止め、皿に盛り付けた。それから鼻歌を歌いながら皿を机に並べる。三人用のダイニングテーブルに一人で座るのは、胸にぽっかり穴が開いたように寂しく感じた。

ウスターソースなどをかけ、一口食べてみる。

しかし、どうしたものだろうか。何も味を感じなかったのだ。どこかで聞いたことがある。大切な人を失ったり、いじめにあったりというショックで味が感じなくなってしまうこと。

私は今日、仁菜を失ってしまった。それなら味を感じなくなってしまうのも無理もない。とはいえ、何も食べないとなると流石にお腹が空いてしまうので無理矢理食べた。

受け止められない仁菜の死とミステリアスな椿との出会い。よくわからないけれど、嫌な予感を感じたのだった。

友達は亡くして家族はどこかに行って、まるでみんながみんな、私を置いていくよう。

その背中を私は必死に追いかけようとするけれど、足はすくんだままで動かない。背中はどんどん遠くなっていくばかり。

そんな悲しい現実に私は取り残されてしま たったのだ。

私はもう、ひとりぼっち。助けてくれる人はたぶん、誰もいないだろう。いくらクラスメイトに優しいと言われているとはいえ、私から話の話題を出したこと、悩みの相談をしたことは仁菜の前以外一度もないから。

暗い暗い闇の中、私の心は季節外れに実り始めた胡桃のような黒色に染まっていってしまったのだった。