「……胡桃」

どこからか、誰かの声が聞こえる。

「お願い……起きて」

すがりつくように祈る声。

聞き覚えがある。どこか、懐かしい声。

「……母さん?」

重い瞼をゆっくり開けるとそこには目に涙を浮かべた母さんのドアップがあった。

ここは……どこ?

辺りを見渡してみると、白い天井と蛍光灯。外を眺めやすそうな細長い窓。そして、体につながれたたくさんのコード。どうやらここは病院らしい。

「私、どうしてこんなところに……」

「目覚めたのね?よかった」

目に涙を浮かべていた母さんは脱力するように、安心した顔で言った。

それから近くにあった、パイプ椅子にぐったり座り込む。

「生きてて、よかったわ。母さんのこともわかるのね?自分の名前は?」

終始安堵のため息を吐きながら母さんは言った。どうやら相当、私のことを心配してくれていたらしい。

「……胡桃」

目覚めたばかりだからか、声が出にくい。きっと長い眠りの中にいたのだろう。かすれた声を出すので精一杯だ。