「全然、瘡蓋になってたし」

照れているのか、頬を赤く染めて椿は言った。その姿に思わず笑みが零れる。でも椿は気づいてないようだった。

二口目を食べようとすると、椿はまだシチューに手をつけてない様子だったことに気がついた。

「食べないの?」

腹が減っては戦はできぬとか、自分から言ってきたくせに。

「ごめん、胡桃が可愛くてつい……」

はっと我に返って、椿はボソボソと言った。それからシチューを一口すくい、食べ始める。

聞き間違い?

そう思って、顔が熱くなるのも受け流した。

「ねぇ、椿」

「ん?」

「ご飯が美味しいって幸せだね」

「ああ」

首を傾げている椿も知らず、私は17日ぶりに感じた食事の味を忘れないように噛み締めたのだった。