「いなくなるんならさ、俺のこと助けなくていいよ」

「えっ……?」

驚きのあまり声を失い、硬直する。

「どうして……?」

聞かずにはいられなかった。助けてと頼んできたのは、椿の方からだから。

「さっき、言ったろ?胡桃が俺の生きる意味だって」

確かにそう言われた。私だって椿からも、この世からも離れたくない。だからって、虐待を放っておけるわけない。

「ごめんね。これ以上椿を、不幸な目に遭わせたくない」

寂しさを堪えるように歯を食い縛り、顔を俯かせてぼそりとつぶやいた。

「不幸になってもいいさ。胡桃といられるなら」

まっすぐな眼差しをこちらに向けて椿は言った。

あまりの嬉しさに涙が溢れそうになる。こんなに私を必要としてくれる人に会ったのは仁菜以来だ。いや、一人目かもしれない。

それが椿の望む幸せなの?

だからって私と仁菜を地縛霊にさせるつもり?

「そういう問題じゃないの。仁菜まで地縛霊にさせるのは嫌なの」